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Measurements of Carbon Content and Retained Austenite Volume Fraction in Steels by Neutron Bragg-edge Transmission Analysis at a Compact Neutron Source, AISTANS小型中性子源AISTANSにおける透過中性子ブラッグエッジ分析による鋼の炭素含有量および残留オーステナイト体積率の測定

Authors:

Abstract

Neutron Bragg-edge transmission analysis was performed at a newly constructed compact neutron source, AISTANS, for 30Mn-C austenitic steels and ferrite-bainite-retrained austenite (TR) steels, which had previously been measured at BL22, RADEN, in J-PARC MLF. Employing a newly developed 2D Li-glass neutron detector, Bragg-edge spectra were obtained at 1 kW electron-beam operation of AISTANS. The obtained profiles were analyzed using the RITS code. In 30Mn-C steels, the determined lattice parameters were found to show a linear dependence with carbon content, similarly to the results obtained at RADEN. In TR steels, Bragg-edge spectra obtained from three orthogonal directions were differently shaped each other stemmed from the texture. Reasonable fitting was obtained only in the cases in which the influence of texture was weak; the profile obtained along the rolling direction or averaged one of the three directional results.
© 2024 The Iron and Steel Institute of Japan. This is an open access article under the terms
of the Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives license (ht t ps://
creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/).
小型中性子源AISTANS
透過中性子分析
鋼の炭素含有量び残留体積率の測定
Measurements of Carbon Content and Retained Austenite Volume Fraction in Steels
by Neutron Bragg-edge Transmission Analysis at a Compact Neutron Source, AISTANS
木野 幸一・友田 陽 大島 永康
Koichi Ki no*, Yo TomoTa and Nagayasu oshim a
* Corresponding author. E-mail: koichi.kino@aist.go.jp
Received date:
Accepted date:
Advance published date:
Apr. 8, 2024
Jun. 14, 2024
Jun. 21, 2024
DOI: https://doi.org/10.2355/tetsutohagane.TETSU-2024-048
Please cite this article as:
K. Kino, Y. Tomota and N. Oshima: Tetsu-to-Hagané, (2024), (in Japanese). https://doi.org/10.2355/
tetsutohagane.TETSU-2024-048
鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Advance Online Publication Version
1
「鉄と鋼」 投稿申請書 (原稿「タイトルページ」)
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記⼊⽇
2024 年6⽉12
投稿論⽂の題⽬
(⽇本語)
小型中性子源
AISTANS
における透過中性子ブラッグエッジ分析による鋼の炭
素含有量および残留オーステナイト体積率の測定
投稿論⽂の題⽬
(英語)
Measurements of carbon content and retained austenite volume fraction in steels
by neutron Bragg-edge transmission analysis at a compact neutron source,
AISTANS
原稿種類
論⽂ レビュー 速報論⽂ 寄書 技術報告
ISIJ International
らの転載について
転載である (Vol. , No. , pp. - ) 転載では
ない
No.
著者の名前(全員)
※和・英
ORCID
iD 1
所属 ※和・英
E-Mail
山田 太郎
0000-
0002-
6135-
9194
鉄鋼大学大学院科学技術学部応用科学専攻
yamada@tetsud
ai.ac.jp
Tarou YAMADA
Department of Engineering and Applied Sciences,
Faculty of Science and Technology, University of
Tekko
A1
木野 幸一
0000-
0002-
7293-
4377
分析計測標準研究部門 産業技術総合研究所
新構造材料技術研究組合
koichi.kino@ai
st.go.jp
Koichi KINO
Research Institute for Measurement and
Analytical Instrumentation, National Institute of
Advanced Industrial Science and Technology
(AIST)Innovative Structural Materials
Association (ISMA)
A2
友田
0000-
0003-
1820-
8523
分析計測標準研究部門 産業技術総合研究所
新構造材料技術研究組合
yo.tomota.22@
vc.ibaraki.ac.jp
Yo TOMOTA
Research Institute for Measurement and
Analytical Instrumentation, National Institute of
Advanced Industrial Science and Technology
(AIST)Innovative Structural Materials
Association (ISMA)
A3
大島 永康
0000-
0002-
5713-
112X
分析計測標準研究部門 産業技術総合研究所
新構造材料技術研究組合
nagayasu-
oshima@aist.go
.jp
Nagayasu
OSHIMA
Research Institute for Measurement and
Analytical Instrumentation, National Institute of
Advanced Industrial Science and Technology
(AIST)Innovative Structural Materials
Association (ISMA)
A4
1
Abstract:
1
Neutron Bragg-edge transmission analysis was performed at a newly constructed compact neutron
2
source, AISTANS, for 30Mn-C austenitic steels and ferrite-bainite-retrained austenite (TR) steels,
3
which had previously been measured at BL22, RADEN, in J-PARC MLF. Employing a newly
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developed 2D Li-glass neutron detector, Bragg-edge spectra were obtained at 1 kW electron-beam
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operation of AISTANS. The obtained profiles were analyzed using the RITS code. In 30Mn-C steels,
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the determined lattice parameters were found to show a linear dependence with carbon content,
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similarly to the results obtained at RADEN. In TR steels, Bragg -edge spectra obtained from three
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orthogonal directions were differently shaped each other stemmed from the texture. Reasonable
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fitting was obtained only in the cases in which the influence of texture was weak; the profile obtained
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along the rolling direction or averaged one of the three directional results.
11
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Keywords:
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Steel; Carbon content; Austenite volume fraction; Bragg-edge analysis; Compact neutron source
14
15
16
2
1. 緒言
17
鉄鋼材料の高強度・高延(靭)性化を目指す最近の研究開発では,TRIP 1-4)Q&P
18
5,6),ナノベイナイト鋼 7 -10) ,中 Mn 鋼,D&P 11)R&P 12)等々にみられるようにオー
19
ステナイト相の活用が鍵になっている。組織制御によりフェライト,ベイナイト,マルテ
20
ンサイトやその複合組織中に分散するオーステナイト相の体積率を正確に測定することは
21
きわめて重要である。種々な測定法の検討結果によると「中性子回折マルチリートベルト
22
解析を用いて相体積率と集合組織を表す方位分布関数 (ODF)を同時に同定するのが最も
23
適当であること」が示されている 13,14)。特性改善には相体積率のみでなく,オーステナイ
24
ト粒の形状サイズ分布状態や含有炭素濃度の制御が重要である炭素濃度に関しては,
25
FE-EPMA 解析 1 5)X線回折 16),3次元アトムプローブ (3D-APT)1 7)を用いた研究報告があ
26
るが,電子線や X線はごく表面層の情報しか得られず,3D-ATP は針状試料の測定となる。
27
そのため,鋼板の平均情報とは異なる懸念がある。特に準安定オーステナイト相は表面近
28
傍でマルテンサイト変態しやすいので,鋼板のバルク情報(平均炭素濃度および相体積率)
29
を求めるには,各種量子ビームの中で透過能の高い中性子線を用いるのが好ましい。 そこ
30
で,新構造材料技術研究組合(Innovative Structural Materials Association: ISMA)による新エネ
31
ルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology Development
32
Organization: NEDO)の革新的新構造材料等研究開発プロジェクト 18)においては,2種類の
33
共通試料を作製して,J-PARC BL19 匠において中性子回折測定を行った 19)。ひとつは
34
熱処理履歴によりオーステナイト体積率の異なる Mn-Si-C 鋼(以後 TR 鋼と呼ぶ)の相体
35
積率測定 14,19)で,もうひとつは 30Mn-C 鋼の炭素含有量の同定 19,20)であった。
36
一方,ISMA では産業界からの迅速・簡便な中性子計測の要求を踏まえて小型中性子源
37
の活用に注目した。すでに,北海道大学 HUNS21 )では中性子小角散乱測定の実績があり,
38
ナノ析出物やクラスターの測定において大型中性子源施設の装置と同等な測定ができるこ
39
22,23)を報告している。また,理化学研究所 RANS2 4)においては,中性子イメージングに
40
よる鉄鋼の腐食(塗膜下の水検出)
25,26) 中性子回折による残留オーステナイト量の測 27)
41
や集合組織測定 28)等を行って優れた成果を報告している。これら既存の小型中性子源装置
42
3
の活用を進めると同時に,ISMA では産業技術総合研究所(産総研にて小型中性子計測装
43
置の設計・建設が進められた 29-32)。新設された装置は AISTANS (Analytical facility for
44
Industrial Science and Technology using Accelerator-based Neutron Source)と呼称され「マルチ
45
マテリアル製品の非破壊計測等の中性子ブラッグエッジ透過イメージング」に装置全体の
46
最適化が図られた。前述した測定は,中性子回折測定と同様に中性子ブラッグエッジ透過
47
イメージング測定でも可能と思われる。機械部品等におけるミクロ組織や炭素濃度の分布
48
を測定するには,回折ではゲージ体積を小さくしてステップ的に走査測定を行うが,ブラ
49
ッグエッジ測定では 2次元(2D)検出器を用いて 2D マップが得られ,さらに試料を回転さ
50
せることにより 3次元トモグラフィ(3D-CT)を得ることも期待できる 33,34)
51
先に行った J-PARC RADEN における中性子ブラッグエッジ透過測定では,30Mn-C 鋼の
52
炭素含有量に関して中性子回折の結果とほぼ一致する結果が得られた 20) TR 鋼に関して
53
は,一方向からのみ測定 14)だったのでブラッグエッジスペクトルに集合組織の影響が強
54
現れオーステナイト相体積率同定が難しかった。
55
そこで本研究では同じ試30Mn-C 鋼と TR 鋼)を用いて,AISTANS において中
56
性子ブラッグエッジ透過イメージング測定を行い,(1)小型装置活用の可能性を探ることお
57
よび(2)相体積率に関して 3方向から測定して相体積率同定に及ぼす集合組織の影響を考
58
察することを試みた。
59
60
2. 測定試料および実験方法
61
2. 1 型中性子源 AISTANS による中性子ブラッグエッジ透過イメージング測定
62
ISMA では 2017 年度より産総研内既存の建屋内に AISTANS の構築を開始して,2020
63
にパルス熱中性子ビームの発生に成功し,2023 年現在,熱冷パルス中性子ビームが利用
64
可能である。装置の概要を Fig. 1 に示す。装置は主に,パルス電子ビームを生成するため
65
の電子線加速器,電子ビームから中性子を発生させてそれをビームとして取り出す中性子
66
源,中性子ビームを下流に導き計測に用いるビームラインで構成される 29-32 )
67
AISTANS は先に述べたように,ブラッグエッジ透過イメージングに最適化するコンセプ
68
4
トで開発された。製品を実用的な計測時間およびブラッグエッジスペクトル分解能にてイ
69
メージングできるよう,様々な工夫が装置全体に施されている。小型パルス中性子装置と
70
しては,中性子を発生させるための一次ビームとして,電子線や低エネルギー陽子線など
71
が考えられるが,ブラッグエッジ透過イメージングに必要な短パルス中性子が高強度で得
72
やすい電子線が選択された。この電子線を発生させる電子加速器は,3 MeV の電子ビーム
73
を生成する電子,さらに 3540 MeV にまで加速するための長さ 2.8 m 3本の加速空
74
洞,4極電磁石,ステアリング電磁石などで構成される。使用するマイクロ波の動作周波数
75
2856 MHz であり,最大電子ビームピーク電流 250 mA最大電子ビームパルス幅 10 µs
76
最大電子ビーム繰り返し周波数 100 Hz である。このときの最大パワーは約 10 kW となる。
77
電子ビームから中性子を発生させるのに,光核反応を用いている。中性子を効率よく得
78
るには重い原子核が良く,また高温への耐性を考慮し,電子ビームを照射するターゲット
79
としてタンタルを選択した。放出される中性子のエネルギーは 1 MeV 程度であり,このま
80
まではド・ブロイ波長が短くブラッグエッジイメージングには使用できないため,中性子
81
を減速(低エネルギー化)させねばならない。ブラッグエッジイメージングには,エネル
82
ギー数十〜 meV,波長にして数 Å程度の中性子が必要である。この減速材として,約
83
20 K の固体メタンが選択された。固体メタンは低エネルギーの回転レベルを持つため,中
84
性子との相互作用により,中性子を効率的に冷中性子領域にまで減速できる特性がある。
85
また,減速された中性子は電子ビームと同期してパルス状になる。AISTANS で用いる中性
86
子飛行時間法を用いたブラッグエッジイメージングでは,パルス中性子の時間幅が狭いほ
87
うが,ブラッグエッジスペクトルの波長分解能を高くすることができる。このため,現在
88
2つあるビームラインのうち本研究で用いた第1ビームラインでは,時間幅が狭く成るよ
89
う,固体メタン減速材の周囲をカドミウムで覆った,非結合型と呼ばれるタイプを採用し
90
た。
91
非結合型固体メタン減速材から放出されるパルス中性子ビームを如何に効率良く測定試
92
料に照射するかが,計測時間や測定データ精度の点から重要である。この課題解決のため,
93
AISTANS では小型中性子装置としては初めて最適化されたスーパーミラーガイド管を設
94
5
置した。スーパーミラーガイド管は,ガラスなどの基板にニッケルとチタンの多層膜を積
95
層したもので,そこでの中性子ブラッグ反射により輸送効率が増加する。全長約 4.7 m,断
96
面は約 130 mm×130 mm である。中性子減速材から約 8 m の場所(試料位置)でビーム軸
97
付近(10 mm ×10 mm)に飛来する中性子ビーム強度を実測した結果,スーパーミラーガイド
98
管が無い場合に比べ,波長 0.4 nm 付近では約 6倍の中性子強度増加が認められた 32)。な
99
お,スーパーミラーガイド管を用いた場合は,試料位置(中性子減速材から約 8 mにて
100
100 mm(幅)×100 mm(高さ)の中性子ビームが利用できる。
101
ブラッグエッジイメージングに最適化した Fig.1 の第1ビームラインでは,設定した波
102
長分解能約 1%を満足する測定が可能であることが確認されているので 35),本実験ではこ
103
のビームラインを使用した。また,2022 年度に外力印加あるいは加熱状態で中性子によ
104
るラジオグラフィや 3D-CT が測定できる高効率で測定できるように結合型モデレーターか
105
らの高強度中性子ビームライン(第2ビームライン)を追加した。両ビームラインでは X
106
線によるラジオグラフィーや 3D-CT も可能であり,マルチプローブ化されている 36)
107
加速器調整中に実施した本実験では,電子ビーム強度は約 1 kW40Hz の運転条件で
108
った。試料はアルミニウム製のホルダーに Fig. 2 のようにセットした。中性子源から試料
109
および検出器までの距離は約 8 m である。測定には,中性子検出効率の高いリチウムガラ
110
スシンチレータを用いて新たに開発し 2次元検出器を用い,測定時間は 6時間であった。
111
この器は ンチ 光を マルノー 光電倍管 トニ
112
H9500計測し重心計算することによって中性子検出位置分解能を向上せた先行37)を,
113
4倍の有効検出面積に発展させたものである。試料なしの状態で3時間の測定を行って両
114
者から透過率を算出した。検出器の有効検出面積は 100 mm×100 mm で,0.8 mm×0.8 mm
115
ピクセルサイズでデータ解析を行った。
116
117
2. 2 素含有量の異なるオーステナイト鋼の測定
118
30Mn-C 試料は文献 20)で説明した炭素含有量の異なる試料うち
119
A0(0.0007 mass%C)A3(0.0108)A4(0.75)A5(0.85)A6 (0.95)A7(1.05)A8(1.20) 7
120
6
である。文献 20 の表から本実験で測定した試料の化学組成を Table 1 再掲する。試料の
121
形状と寸法は円盤状で直径 30 mm厚さ 6 mm であった。先に J-PARC で測定した試料の再
122
測定なので,熱処理条件や試料形状・寸法等の詳細は文献 20)に示してあり割愛する。最終
123
な目標は脱炭層や 2相組織内のオーステナイト粒の炭素濃度の測定であるがそのため
124
には,計測速度やデータ統計精度を改善するなどの必要があり装置や検出器の高度化が
125
必要である。今回は中性子ブラッグエッジ測定活用の可能性を探る基礎実験として実施し
126
た。測定用ホルダーにセットした試料の様子を Fig. 2 に示す。
127
128
2. 3 留オーステナイト体積率の測定
129
実験に用いた TR 鋼の化学組成は 0.20C-1.50Mn-1.52Si-0.009P-0.001S mass%で,施した
130
処理の概略Table 2 に示す。ミクロ組織等の詳細は文献 14 に記載されているので,ここ
131
では割愛する。合計 525 方向から得られた中性子回折プロファイル群をマルチリートベル
132
ト解析により集合組織を表す方位分布関数(ODF)と合わせて同定した残留オーステナイト
133
体積率は,試料 TR1TR2TR3 で,Table 2 に示すように,それぞれ 14.8%,13.9%,0
134
であった。先に J-PARC RADEN を用いて圧延(R)方向から得た中性子ブラッグエッジス
135
ペクトルを佐藤らが開発した RITS コード 38,39)で解析したところ,残留オーステナイトを
136
含まない TR3 でも集合組織の影響が強く,良好なフィッティングができなかった。そこで,
137
本実験では,板面法線(N)方向と板幅(T)方向も加えて直交 3方向から入射ビームを照射
138
ブラッグエッジスペクトルを測定した。試料は厚さ 1.2 mm の鋼板から Fig. 2 に示す形状に
139
切り出し 8枚重ねて測定ホルダーにセットした。測定の様子を Fig. 1(b)に示す。
140
141
3. 実験結果および考察
142
3. 1 試料群全体の中性子ブラッグエッジスペクトルと透過率マップ(ラジオグラフィ)
143
中性子飛行時間 5~25 ms 域での平均透過率をピクセル毎に算出した 2次元マップ Fig.
144
3(a)である。Fig. 2 の試料に対応する濃淡が見られ,枠で囲んだ領域のピクセルから個々の
145
試料の中性子ブラッグエッジスペクトルを求めて以後の解析に用いた。試料を置かずに測
146
7
定した場合(Direct)と試料ありの場(Sample)に得られた中性子カウント数の波長依性を
147
Fig. 3(b)に示す。Direct のスペクトルにもブラッグエッジが見られるが,これはビーム透過
148
経路中の固体メタンモデレータ容器等のアルミニウムによるものである。アルミニウム起
149
因のブラッグエッジ位置を反射指数 hkl とともに矢印で示した。Sample には試料由来の多
150
数のブラッグエッジが現れている。両測定の入射ビーム総中性子パルス数を考慮して透過
151
率を計算すると,Fig. 3 (c)のように試料群のブラッグエッジを観察できる。
152
153
3. 2 オーステナイト鋼における炭素含有量の測定
154
炭素含有量の異なる 7種類の鋼の中性子ブラッグエッジスペクトルを Fig. 4 に示す。今
155
回は試料内の炭素濃度分布は一定と見做して,統計精度を高くするために 16×16 ピクセル
156
のデータを集めて解析した。先に測定した RADEN の結果 20)と同じように FCC であるオー
157
ステナイト相のブラッグエッジが明瞭に検出された。炭素含有量の低い鋼で 110 ほかの
158
FCC 禁制回折面に関するエッジが一部で見られるのは,先に報告 20)したようにネール温度
159
が高く室温で反強磁性となり,磁気回折が生ずるためである。各エッジは RADEN の結果
160
に比べるとシャープでなく波長分解能の差がFig.5 挿入図にれている(飛行距 L
161
24m であった RADEN では波長分解能は約 0.2%なのに対して,約 8mの AISTANS では約
162
1以下 35))。 格子定数はブラッグカットオフでのフィット精度で決まるので,カットオフがシ
163
ャープなスペクトルの方が,格子定数の値を決定しやすい。ブラッグエッジスペクトルの RITS
164
コードによるフィッティング例を Fig. 5 に示す。フィッティングによって得られた格子定
165
数と結晶子サイズを炭素含有量に対してプロットした結果が Fig. 6 である。
166
Fig. 6 (a)に見られるように格子定数と炭素含有量はほぼ比例関係にあり,最小二乗法で
167
フィッティングすると,
168
󰇟󰇠  󰇛 󰇜 󰇛󰇜 (1)
169
の関係が得られた。RADEN で得られた
170
󰇟󰇠  󰇛 󰇜 󰇛󰇜 (2)
171
と比べて,炭素含有量に対する比例係数は,誤差の範囲を超える差はあるものの,概ね一
172
8
致した。将来展望として,トモグラフィ測定による鋼製品の脱炭領域(炭素濃度)の 3
173
元分布の同定検出器が改善され空間分解能 μm オーダーなれば 2相組織内の炭素
174
度分布測定等への展開が期待される。一方,Fig. 6 (b)は結晶子サイズの結果である。先に報
175
20)したように炭素含有量が 0.75 mass%(A4)以上の鋼では炭化物を分解させるために高温
176
再加熱の熱処理を施したので,オーステナイト結晶粒が粗大になっている。これを反映し
177
て,結晶子サイズは低炭素鋼と高炭素鋼で大きく異なる結果となった。これは RADEN
178
おける分析結果 20)と同じである。一方で AISTANS にて得られた結晶子サイズの絶対値は,
179
RADEN の値よりも小さい傾向にある。この差の原因として解析ソフト RITS が改訂された
180
こと 39)によるものが考えられる。RITS の新しいバージョンでは多くの回折プロファイル解
181
析ソフトウエア 40-42)で用いられる定義に合わせた結果,以前のバージョンに対して結晶子
182
サイズが FCC 金では 1/2 になっている。なお,結晶子サイズは一切の狂いもなく規則正
183
しく原子が並んだ結晶領域の大きさ(モザイクサイズ)に対応し,これは転位等の格子欠陥
184
に影響されるので,ミクロ組織観察で測定される ASTM 結晶粒径に比べて小さくなる事例も
185
報告されている 43)
186
187
3. 3 留オーステナイト体積率の同定
188
3方向(N,R,T)から測定した TR1TR2 および TR3 のフラッグエッジスペクトルをそれぞ
189
Fig. 7 (a), (b), (c)に示す。方向によって形状が異なり,集合組織の影響が大きいことがわ
190
かるT方向である Fig.7 (c)は,先に J-PARC RADEN を用いて T方向で得られた中性子
191
ブラッグエッジスペクトル 14)と良く一致している。
192
RITS コードでは回折プロファイルに対するリートベルト解析ソフト(GSAS40Z-リ
193
ートベルト 41
)のように集合組織補正には March-Dollase パラメータRhkl42-46)が用いられ
194
ている。ビーム透過方向に<hkl>粒が優先配向していると Rhkl
<1.0垂直に配向していると
195
Rhkl 1.0 で表される。最新の GUI-RITS コード Ver.1.4.2 では<hkl>を3つまで選択してフィ
196
ッティングを行うことができる。金属板の集合組織を最も簡単に表現するには,結晶粒群
197
の代表的な板面ミラー指数{uvw}と圧延方向 <hkl>が使われる。圧延・焼鈍鋼板の集合組織
198
9
の代表的主成分とし{111}<112>報告されている 47)を参考に,まず留オーステナ
199
イトを含まない TR3 R方向のスペクトルにおいてR11−2 変数として bcc 結晶相にて
200
ィッティングを試行した。しかし,特 110 反射ブラッグエッジの形状は十分に再現でき
201
ず,集合組織フリーの条件での試行結果と大差はなかった。110 反射ブラッグエッジはブラ
202
ッグカットオフ付近でやや先鋭的であるので,現象論的ではあるが 110 配向を仮定してフ
203
ィットしたところ,ブラッグエッジ形状の再現が良くなった。これらの結果を Fig.8 (a)
204
示す。110 配向の時の March-Dollase パラメーターR110 0.685 であった。R方向とは違い,
205
J-PARC でも測定した T方向のブラッグエッジスペクトルは特に集合組織の影響が強く,
206
残留オーステナイトを含まない TR3 あっても,1方向の考慮ら始めてフィッティング
207
の改善が困難であった。TR3 N方向でも同様にィッティングの向上が得られず,複雑
208
な集合組織をさらに複数 Rhkl で補正するのは困難であると思われた。
209
先に中性子回折において 525 方向から測定し集合組織解析ソフ MAUD42)を用いて結晶
210
方位分布関数(ODF)と同時に残留オーステナイト体積率を測定するのが最も適当であると
211
いう結論が得られているので 13,14),少しでも集合組織の影響を少なくするために N,R,T
212
3方向から得られたブラッグエッジスペクトルの加算平均を求め,集合組織フリーの条件
213
RITS 解析した結果が Fig. 8 (b)である。しかしながら,平均を取っても T方向に特有な
214
110 エッジの結晶配向がスペクトルに残っており0.35-0.40 nm), 集合組織フリーの条件で
215
の解析には十分とは言えないようである
216
次に同様な試みを 2相組織の TR1 TR2 について行った。ここで中性子透過ビーム強
217
󰇛󰇜は波長の関数として次式で表される。
218
󰇛󰇜 󰇝 󰇛󰇜󰇞 (3)
219
ここで,は結晶(相)の種類,は波長依存の全散乱断面積,は原子数密度,は厚
220
さ(透過距離)を表す,ここでは,透過原子数密(projected atomic number density)と呼ば
221
RITS コードによるフィッティングによって同定される変数をフェライ bcc (F)
222
オーステナイト fcc (A)のビーム透過距離の和からなると考えると,オーステナイト体積
223
率(
)は次式で求められる 43,46)
224
10
󰇛󰇜
󰇛󰇜
󰇛󰇜
(4)
225
ここで aAaFはそれぞれオーステナイトとフェライトの格子定数である。また,ース
226
ナイトおよびフェライトの単位胞体積を表す aA3および aF3は、オーステナイトおよびフェ
227
ライトの単位胞あたりの鉄原子の個数である 42でそれぞれ規格化してある。TR1
228
TR2 の間ではブラッグエッジスペクトルの形状にほとんど差異がなかったので,ここでは
229
TR1 につい RITS によ 2相フィッティング結果の例を Fig. 9 に示す。オーステナイト
230
のブラッグエッジがフェライトのそれに比べて弱こともあり R方向のスペクトル(Fig.9
231
(a)でも 3方向平均スペクトルFig.9 (b)でもフィッティングはあまり良くない。R方向
232
のフィッティングではフェライトの結晶配向 R110 値を 0.685 に固定,フェライトは等方配
233
向とした。3方向平均では,オーステナイト,フェライトともに等方配向とした
の同定
234
値は R方向の場合は 23であり,先に回折で得られている値 13.0%14)より大きくなった。
235
Fig. 9 (b)3方向平均の結果では約 29%で先に回折で求めた値との乖離は大きくなった。
236
オーステナイトの 200 反射ブラッグエッジカットオフ付近の実験とフィット両スペクトル
237
を比べると,200 反射が先に TR1 で述べた T方向に特有な 110 エッジの結晶配向と混同さ
238
れてしまっていると解釈された。このように結晶配向によるブラッグエッジの特異形状に
239
比べオーステナイトのブラッグエッジが弱いため,フィッティングも容易ではない。一方
240
で佐藤らはフェライト鋼SS400: BCC板とオーステナイト鋼SUS304: FCCを人工的
241
に組み合わせた試料を作製して,北大 HUNS J-PARC RADEN で中性子ブラッグエッジ
242
透過イメージング測定を行い相体積率の同定法を検討している
25%以上で検討)
243
の結果,サンプルからの散乱中性子が抑制され、かつ測定装置の波長分解能が約 1%以下
244
であれば2方向の Rhkl を用いることでおよそ 2~3%で相体積率が同定できると結論され
245
46)AISTANS の波長分解能は 1%以下なので,統計を上げれば
の小さい本試料でも同定
246
精度が改善できるかもしれない。Su はフェライト−オーステナイト 2相ステンレス鋼の
247
曲げ変形に伴う集合組織変化や弾性ひずみ(応力)の分布を中性子ブラッグエッジイメー
248
ジングで求めている。この場合のフェライト相体積率は計測領域平均で 60%である 43)。さ
249
11
らに,Woracek らは準安定オーステナイト鋼を用いて引張やねじり変形により誘起された
250
マルテンサイト相の空間分布(相トモグラフィ)について波長選択イメージングを利用し
251
て報告している 48)。彼らは集合組織の影響は考慮していないので正確な体積率分布を求め
252
るには不十分であるが,大略の傾向を知るには有用であろう10%程度の残留オーステナ
253
イトを含む高強度鋼の相体積率を中性子ブラッグエッジ測定で求めた例はなく,集合組織
254
のある実用複合組織鋼を測定するには,データの質と解析法の工夫が必要である。
255
256
4. 結言
257
小型中性子解析装置 AISTANS の性能を検証する実験のひとつとして,先に大型中性子
258
計測装置 J-PARC, RADEN で測定した 2種類の試料ISMA 共通試料の 30Mn-C 鋼と TR 鋼)
259
を用いて透過中性子ブラッグエッジ分析を行った。得られた主な結果は以下の通りである
260
(1)電子ビーム出力 1 kW 運転時の測定であったが,新しく開発・導入したリチウムガラ
261
2次元中性子検出器を用いた約 6時間の測定により,先の RADEN による測定に近い透
262
過スペクトルが得られた。スペクトルをリートベルト型ブラッグエッジ解析コード RITS
263
解析することができ,格子定数(30Mn-C 鋼)とオーステナイト体積率(TR 鋼)が同定
264
た。今回の研究目的に対しては,波長分解能(~1%)やビーム平行度(L/D~80)での解析
265
で有用な結果が得られることがわかった
266
(2)30Mn-C 鋼では多くのブラッグエッジが明瞭に現れ,RITS 解析により格子定数と炭
267
素含有量の間に良好な直線関係が求められた。実験誤差は RADEN による結果より大きい
268
が格子定数から炭素含有量を推定することができる。
269
(3)TR 鋼は板面法線N,幅(T,圧延(R)の 3方向から測定したところ,集合組織
270
により異なるブラッグエッジスペクトルが得られた。T方向のスペクトル形状は先に
271
RADEN で測定されたデータと良い一致を示した。T方向スペクトルの RITS 解析は集合組
272
織の影響が強く困難であったが,R方向(および 3方向の結果の加算平均)スペクトルは
273
比較的良好なフィッティングができオーステナイト体積率が求められた。ただし,中性子
274
回折で求められたオーステナイト体積率との差異があったことから,ブラッグエッジを用
275
12
いるオーステナイト体積率の解析法自体は,今後さらなる高度化が求められる
276
277
利益相反に関する宣言
278
本研究の遂行に関する利益相反は無い。
279
280
謝辞
281
この成果は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託
282
業務(JPNP14014)の結果得られたものです。測定試料は日本製鉄・谷山明博士および神
283
戸製鋼所・村上俊夫博士より提供していただいたISMA 共通試料)。測定では ISMA
284
室賀岳海博士リチウムガラス 2次元検出器の導入においては高エネルギー加速器研究機
285
構の佐藤節夫氏に,中性子ブラッグエッジスペクトルの RITS 解析においては,㈱金属技
286
研の塩田佳徳博士,北大の佐藤博隆准教授,J-PARC の蘇玉華博士および及川健一博士に
287
多大なご支援いただいた。関係各位に謝意を表する。
288
289
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411
18
Table 1 Chemical compositions of 30Mn-C steels measured.
412
Steel
Concentration (mass %)
C
Mn
N
A0
0.0007
31.2
0.012
A3
0.0108
31.1
0.017
A4
0.75
30.72
0.019
A5
0.85
30.72
0.019
A6
0.95
30.49
0.019
A7
1.05
30.35
0.019
A8
1.20
30.20
0.018
413
414
19
Table 2 Heat treatments for TR steels.
415
Specimen
Heat treatment
Austenite
volume
fraction
(vol.%)
TR1
RT heating (10/s) isothermal holding at 780 for 300 s
cooling (50/s) isothermal holding at 400 for 30 s
cooling (50/s) RT
14.8
TR2
RT heating (10/s) isothermal holding at 780 for 300 s
cooling (50/s) isothermal holding at 400 for 300 s
cooling (50/s) RT
13.9
TR3
RT heating (10/s) isothermal holding at 780 for 300 s
cooling (50/s) RT heating (65/s) isothermal
holding at 650 for 300 s cooling (50/s) RT
0
416
417
20
418
Graphical Abstract
21
419
Fig. 1. Outline of a compact neutron
source, AISTANS (a) and setting of
samples (b).
22
420
Fig. 2. Specimens set in a holder made
of aluminum.
23
421
422
Fig. 3. (a) Neutron transmission image obtained in a TOF region from 5 to 25 ms.
Analyzed areas for the samples are shown as black squares. (b) Neutron intensity
spectra with sample and without sample in the region A0 in Fig. 3 (a) . Bragg-edge
positions of aluminum materials seen in the spectrum without sample are shown by
arrows. (c)
Transmission spectrum for A0 is shown here as an example. This spectrum
was
obtained by dividing the spectrum with sample by the spectrum without sample
shown in Fig. 3 (b).
24
423
Fig. 4. Bragg edge spectra of 30Mn
steels with various carbon concentrations.
25
424
Fig. 5. Result of profile fitting with the
RITS code for steel A0. The inserted
figure shows a comparison between the
spectra obtained at AISTANS and
RADEN20).
26
425
426
Fig. 6. Lattice parameter (a) and crystallite size (b) determined by the RITS code
plotted as a function of carbon content. The solid line in (a) is a fit curve. The dashed
red lines in (b) are drawn to guide the eye.
27
427
428
Fig. 7. Neutron Bragg-edge spectra obtained from three orthogonal directions: ND
(a), RD (b) and TD (c) for steels TR1, TR2 and TR3. Transmission of TR2 and TR3
spectra are shown by shifting upwards from the original values by 0.05 and 0.10,
respectively.
28
429
430
Fig. 8. Transmission spectra and fit results by the RITS code for the TR3 sample: RD
(a) and average of ND, RD, and TD (b). Fit results based on the free texture (isotropic),
11−2, and 110 crystalline orientations are shown in Fig. 8 (a). The free texture
(isotropic) was assumed for the fitting in Fig. 8 (b).
29
431
Fig. 9. Transmission spectra and fit results assuming the bcc and fcc crystalline
phases by the RITS code for the TR1 sample: RD (a) and average of ND, RD, and TD
(b). In Fig. 9 (a), the 110 and the free texture (isotropic) were assumed for the bcc and
fcc crystalline phases, respectively. The free texture (isotropic) was assumed for both
phases in Fig. 9 (b).
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Article
Bragg-edge transmission imaging using a pulsed neutron source is expected to be a new method to investigate the crystallographic and metallographic structure of a material. This method has attracted the attention in the research field of material characterization for materials development and industrial applications because it non-destructively provides the images on the texture and the microstructure inside a material such as a thick steel bulk over the wide area of the material. For deducing such information from the Bragg-edge transmission spectrum, a data analysis code like a Rietveld analysis code for powder diffractometry is indispensable. So far, only the information on the crystallographic anisotropy has been deduced. However, this information is incomplete since both the preferred orientation and the crystallite size affect the Bragg-edge transmission spectrum. Therefore, we have developed a Rietveld-type analysis code, RITS, that allows us to obtain the information on preferred orientation and crystallite size at the same time. To examine the feasibility and the usefulness of the RITS code, we have analyzed the Bragg-edge transmission spectra of rolled and welded α-iron plates, and we have successfully obtained the preferred orientation data and the crystallite size data over the wide area of the bulk specimens.
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