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Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service
Arohiteotural エnstitute of Japan
日本 建築学会技術報告集
第13号，271
−274
，
2001
年フ月
AIJ J． Technol． Des． NQ ．
13，2フ1−274，
Jul．
，
2001
1999
年 トルコ地震における応 急 SURVEY
REPORT
ON
THE
SHELTERS
避難住居 に 関する調査報 告 FOR
EMERGENCY
EVACUATION
IN
TURKEY
EARTHQUAKE
1999
越山健 治 一＊1
キー
ワード：
トル コ地震，
テ ン ト村 ，仮設住 宅，災害後避難住居
Keywords ：
Turkey
Earthquake ，
Tent village ，
Temporary house ，
Shelter
after
disaster
Kenji
KOSHIYAMA
−＊1
This
study
is
written
about the situ乱tion and
precess
ofshelters
after
Turkish
earthquake
I999．
The
charaeteristic
ofpost−
quake
Iife
is
that
residents used tents
on
a
tong
−
term
basis
in
a
temporary
evacuation
places
，
Tents
being supplied can be mainly
divided
into three categories ，
lTents
or
barracks
built
by
individuals
and
located
nearby
original
housings，
2Tent villages tha亡are approximately
over
ten
units
or hundred
units
built
in
parks
or
next
to
public
facilities
and are under
public
life
．
3Army
or public
sector
provided
a
lot
of
tents
on the
public
space ．
The
temporary −
housing supply
plan
has
three
characteristics
，
which
are ：
lGreat
scale
temporary
housing
cities
are
cons 亡ructed ，
2Temporary
・
housing
plan
is
made
with
consideration ofcommunity facil
−
ities
inciuding
building
arrangement
plan
，
primary
schoo ］s，
shopping
streets
and
etc．
3
Variousしemporary −
heusing supPlying
Plan
，
1．
は じめ に
1999 年トルコ共和国では、
8月17 日現地 時 間 3時2分にM7 ．4（以
降コジャエリ地 震 ）、11 月王2日16 時57 分 に M7 ．2（以降ボル地震）
の 巨 大地震が相次いで 発 生 し、併せて死 者17，
OOO 人以上、倒壊住宅
戸数が約10 万 戸 と いう大 被 害 を生 じた。被害地域は イ スタンブルを
中心 と した経済、産業、
工業の中枢 地域であ ることや、連続災害に
よって被 害 地域が 拡 大 した ことなど に よ り、救 援 ・
救助 に多大な労
力が必要となり、都市の復旧・
復興 に 多くの困難が当初か ら予 想さ
れていた。特に住宅被害によって多くの被災者が避難生活を余儀な
く され てお り、地震後の応急避難計画や住宅再建計 画 は 最 も重要 な
課 題 とな っている。
こ の 地震被害の復旧・
復興状況を把握す るため、
筆者 は 1999 年
ll 月に 日 本建築 学会 第 2次調査団 （団 長 ；佐々波秀彦氏）として被
災地 を 視 察 し 、関係 自治体 や 省 庁 、大学機関に て ヒアリング を行 っ
た。ま た、
2000 年7月に トルコ被災地再建支援調査団 （団 長 ：中 林
一
樹東京都立大学教授）に 同 行し、当時の状況 を 視察し再建の支援
策を検討す るとともに情報や資料の収集 を行 った。本稿では 現 地 等
で収集した資料や情報 をも と に、被 災者 の住宅再建過程の初期段 階
である応急避難過程 に焦 点 を当てて、その実態及び特徴 を捉 えるこ
とを 目 的とする。なお本文は文 献 9）、文献10）
をも とに作 成 した、
日本 建 築学 会 他 3学会 合 同 トルコ・
コジャエリ地震報告書の筆者担
当部分の原 稿 に加筆、
修 正 を加 え たものである。
2．
住 宅被 害の概 要
両地震 で被害が甚 大 であった5県について建物被 害 の住宅被害
戸数及び人的被害を表 1に示す。
実際の被 害 は5県周辺で も発 生 し
ているた め被 害 総数 はさら に 大 き い。表1より大破 ・
中破戸 数 が約
18万戸になるが、
これは阪神・
淡路大震災の全壊 世帯数とほ ぼ同 数
で あ る 。被害の直接 原 因 は、
建物構 造 の脆弱性 と判断 され て い るが、
さらに社 会的 要 因 が大 きく影響 していると思われ る 。例え ば 建 築基
準 自体 は過 去 の地震災害のたびに改 定 を繰 り返 しており、厳しい基
準が設 け られ ていた に も関 わらず、多くの建 物 で最新の基準が守ら
れていない1）こ とが挙げられ る。また近年の爆発的な人 口増加 と都
市への人口集中か ら （表 2）、都市部の住宅の多 くが短期間で大量に
建設 で き る 4〜
6階 建 のRC フ レ ーム構造 の中層集合住宅 と なって
お り、地 震 動 に弱い構造物 で あ ったことな どである．本災害ではこ
の種の建物被害 が多数 を 占 め て お り 、都市部の人口密集地区が被 害
の中心 と なった点 で阪 神 ・
淡路大震災（
1995 ）やメキシコ地震 （
1985 ）
の被害と類 似 しているが、これ ら 2事例は都市 内の不良住 宅ストッ
クの被害が顕在化 し た 事例であ る のに対し、本災害は近年トルコ国
内に お け る都市人口増 加 に 対 す る受 け皿住 宅の主 流 と な っている比
較 的 良好 な住宅が被 害 の中 心 である点で異なった様 相 を示 している。
表t
被 災 5県にお ける住宅被害戸数と人 的被 害 2｝
地域 名 Kocaeli
Yalova Bolu
Sakarya Duzce 合 計
大 破 34127524 ．
68713 、
8952 、37416 β66 911897
中 破 40 、46018 ，
40614 ，
5906 ，
068 10 、
96 δ90，
492
小 破 45 ρ8627 ．
239 冒β705 、
757 13 ，
070102 、
822
合 計 119 β2て70 ，
332
40 」55
14，
19940 ，
704 285 ．211
死 者 数 9，
4773 ，
890 2，
504 48980 16 β99
負傷者 数9188 τ5，
180 4．
529 3553 ，
836 23 ．
781
199 ア人 口 1，
177 ，
379
731 ，800163 ，
916 553 、
0222 ，
626 ，
117
柵神戸大学大学院 自然科学研究科
助 予 ・
工修
（
〒657
−8501
兵庫県神戸市灘 区六甲古町1−
1）
’1Research
Assoc．
，
Graduate
School
efScience and Technology，
Kobe
Univ ．
，
M．Eng ．
2ア1
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表2 被 災 5県の中心都市 の人口指標
地域 名
Kocaeli Sakarya YalDva BDIu D凵zce
トルコ全 体
中心都 市 IzmiヒAdapazariYalovaBoluDuzce ■
人 ロ
（1997 年 ） 443 、
358356 ，
1299 ↑
、
052129 、
627168 ，
87962 ，
865 、
574
面積（
k）1，
197646 一1．5271 ．014814 ．578
人ロ密 度
（人 ／k ） 37D551 一85167 77
人口増加率 117113118114108111
※ 人11増加率は．
1990 年の人ロを100 とした指 標
※
面積はLgYO 年のデー
タ を 使用。
た だ し Yalova に関しては199C 年に は地 域 がまだ存
在し て お ら ず （⊥std
’
nbul に含まれていた） 面積 は不 明．
3，
応急避難住宅 の特 徴
3．1
トル コ地 震 における応急避難過程
家屋 倒 壊 の被 害 を受 けた 被災者は当面の生活空間の確 保 が 最 重 要
課 題 と なった。本災害 では第一
段 階 の応急避難 としてテントに よ る
生 活 、第 二 段 階 と して プ レ ハ ブを中心 とした仮設住宅の建 設 が 進 め
られ た 。以 下 に テ ント及び仮 設住宅 に関して応急避難住宅として の
特徴 を述べる。
3，2 テントの 状 況
地震後の一時 的 な避 難 空 間 とし て テ ン ト
が長 期間利用 されて い
る点は特徴 的 といえる。これは地震に よ り住宅だけでなく、役所や
学校など公共施設 も壊滅的な被害を受け、多くの避難者を収用す る
空間が不足したことが 最大の理由であろう。政府は大量の テ ン トを
被災地に供 給 してお り、
コジャエリ地震後 に被災地には 10 万個 を超
えるテント
が供 給 されている（表 3）
。
また、ボル地震発生に よ りさ
らな る住宅被害 が生じ、新た に 5万個以上 の テ ン トが 供給 され て い
る3〕
。2度にわたる大地震はテントの供給量 を増大 させ る と 同 時に、
被災者のテント生活の長 期化 をもた ら した。
テントの供給元 は、ト
ルコの赤十 字 であ る 赤新月社 や軍、トルコ国内の民間支援団体や企
業か ら の提 供 、
さ らには海外からの援 助 な どである。各供給元によ
り様 々な種類があり、防 寒 や 耐 久性 能 もそれぞれ差があった。
避難 時の テ ン ト
空間は、発生形 態 によって大き く3つに分 類 され
る。 被 災 した自宅のそばに個人 で 建設され る テ ントや バラック で
生活 す るもの。これ らは被災地に点在 して いる。公園や 公共施設
周辺の空地 な ど に多 くの人が集 ま って 発 生 す るテ ント群 。数 十 から
数百 戸 のテントが 密 集 して建てられ、半共同生活をお くっている（写
真1）。軍 や 自治体が 公 園 な ど の広い空 地 を 確 保 し て 、計画的に 大
量のテントを 配 置 し建設 し た 後 、被災者に供給する もの（写 真2）。
に お いて、地震被害 直 後 に 被災者に供給 されたテントは 、防 寒
性 や 防水性の面で数ヶ月の生活 をす るには性能が十分でないものが
大 半 であった。
テントに よ る避難生活が長期化するにつれて、被 災
者の自力による建築補強や木 材 によるバラックの建設な どが 見ら れ
た。特にボル地震の被災地は冬季 に雪が降る場所であり、
テントに
おける避難生活 は困難を極めたため、政府は防 水 ・
防寒 仕 様 を持 つ
冬用 テ ント
の追加供給を緊急 に行った．
一
方 のよ うに軍や 自治 体
が 計 画 した テ ント村は、テントが 防寒 性、耐久性 に優れ て お り、
一
定期 間居住空間と して の性能を保つことが可能である （写真3）
。
ま
たテント村敷地内 に食事を供給す る場所や洗濯 場、喫
茶店など生活
施設 を大型テントや プレハブ 建 物で配 置 し、避 難 生活に 必 要な施設
を整 備 して いる。これ らの施 設 では地震後半年 間は公的にサービス
の提 供 を行 ってお り、サービス の 終了後にはNPO や テ ント
村居住
写 真 1 空地にできたテント村（1999 年11月撮影）
写 真 2 軍設置のテント村 （
1999 年11月撮影〉
表3 1999年9月時点のテント数4｝
地域名 テ ン ト村
数 赤新月社 軍 隊 海外寄
付 民間寄付 合 計
テント数
KOCAELI491414175532246369250834
GQLCUK225357355767375014135
SAKARYA39984660012539252425509
BOLU 443730 一「卩一 4996 ，一一一 8726
YALOVA19880023046081704 斗5342
ISTANBUL596320 尸一一， 501033
合 計 156 37480 1605 54389 7970 101444
※GOLCUKはKOCAELI にある最大被 災地名
表4 2000 年8月発 表 のテント数2〕
テン ト数
地域名
テント村
数
テント村
人 ロ夏 用 忍用
合 計
テント数
利用
テン ト数
KOCAELI78723o156615661566
SAKARYA1229033533566
BOLU 119662139313332 ア23272
DUZCE10811530199920292029
YALOVA0 000 0 0
合計 29 26729 169 7033 7202 6933
表5 20GO 年8月発 表の政 府提供仮設住宅 数2）
地域名
仮設 住 宅
団地数
計画住 宅
戸数
完 成住 宅 受 け渡し
戸数 戸数利用戸数 総人口
KOCAELI161385013798 131941303549143
SAKARYA8 58545854 5854585421964
BOLU 5 24602460 242724279500
DUZCE 9 32603260 3260326013481
YALOVA13 52165216 5190519D13481
合計 51 30640 30588 29925 29766107569
272
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者 自身による運 営活動が 予 定 さ れ ていた。避難空間として公 共施設
の長期利用が大き な 課 題 と な った阪神 ・
淡路大震災に対し て 、高 性
能テ ン トを一
時的 な避難空間と して堤供す る方法は、備 蓄負 担 の面
や建設労力、移 動 の容易性、用途 の融通性、世 帯別利用 可能な どの
点で今後の日本でも参 考 にできるだろう。
3，
3 仮設住宅供給状況
被災地に建設 され た仮 設 住 宅数 と入居世帯数を政府 による供給、
民間支援団俸及び個人支援 に よ る 供 給 に分 けて表5、表6で 示 す。
仮設 住 宅団地の建設箇所は 5県で139 ヵ所にわ た り、総 数 42616
戸 を建設完了 し 、14 万 人 以上の入々が避難生活をお く っている
（
200G 年8月時 点）
。1世帯あ た り約 3．5人が居住して お り、ま た
18 歳 未満 の居住 入 口割合が高 くなっている。
この仮設 入 居 住民の平
均世帯 入数 、年齢構成は、ほぼ通常のトルコ国内の値と同じである。
この仮設 住宅は次の住宅確保 までの一時的な居住空間 とし て の
性質を持って い るものである．しか しな が ら近年の世 界 にお ける災
害復 興の傾 向を見 る と、仮設住宅の居住期間の長期 化 が見 られ、同
時に居住性能の高いプレハブ製の住宅が供 給 され る よ うになった。
今 回 も数年 の居住に耐えることが できるプレハブ住 宅 による供給が
大半であった。この供 給 計画 の特 徴 と して以下の3点挙 げら れ る。
1点目は大規模仮設住宅団地 が 多 く設 け られ たことである（写真4）
。
被 害 が大 き い都市の人口集 中地 区 には、大きな公園や空地 は ほ と ん
ど存 在 しないため、中心部から2〜3km 離れ た 郊 外 の丘陵地や河川
沿いの空 地 に、数百 か ら数 千 の仮 設 住宅 を有し た 団 地 を政 府 が 建設
して いる場合が多い。
一
方で民間支 援機 関 や 個 人 支 援に よ って建設
され た 仮設住宅団地は 比 較的小 規 模である。1団地 あ た り の平 均戸
数 と居 住 人 口 は 、政府 供給の分が584 戸、
2109 人であ り、民 間 と個
人 による住宅団地では、
128 戸、
415 人 とな っている。これ ら住 宅 団
地の多 くは被災地区か ら離れているが、公共バスな どに よ る 交通 手
段が十分に確 保 されて い ることや 、団地 内 にコミュニティ施設が存
在していることな どか ら 、
阪神・
淡路大震災 に よ って 生 じ た大 規 模
団 地 におけ る住環境の問題点が同様 に顕在化すること は 少 な いよ う
に見 え る。2点目と して 、こ の 大規模な仮設住宅団地計画 で は 住 戸
棟 配置計画 とともに小学校や商店街 、
モ ス クといった建物群の計 画
も組 み込まれ て お り、生活支援及びコミュニティ施設 も 含め た 「
仮
設 住 宅村」として プランが作成 され ていることが 挙 げ られ る 。これ
らの共同利用施設は仮設住宅村に人が入居し て 、生活 が 落ち着 くに
つれて徐々に機能 し 始めている。応急的な住宅を 供 給 す る立場から
見て、仮設住宅村の計 画段階において、住民 生 活 の視点に立ち、
生
活の質 を維持 す る工夫を組み込んでいる点で 特 徴 的 である。これ ら
の施設 は 主 に 国 内 外のNPQ やボランティアによって運営さ れ てお
り、子供の教育活動や女性 の職業訓練所などの積極的な活動 がな さ
れ て いる。3点 目は仮設住宅の供給が 公 的な供給計画だけでな く、
海外国の支援や国内の民間支援機 関の力 を 積極的に取 り入 れ ている
点で あ る。政府 以外 の供給す る仮設住宅は、団地数全体の63％、住
戸数で29 ％、居住人 口数で25％を占めて い る。
これ ら は そ れ ぞ れ に
独自
の計画理論、住戸配置計画、
建設材料、建設技 術 を 盛 り 込 み な
が ら建設 され てお り、特 色 を 持 った様々な 仮設住 宅 団地が存在する
（写真5、6）。こ の 点は、
一
部海外製住 宅を取 り入れた りしたが、
大半が一
律かっ一
様に 公 的 供 給が な され、
ほぼ同質の仮設住宅団地
が存 在 した阪神 ・
淡路大震災 とは大 き く異 なる点である。
表6 2000 年8月発表の民間および個 人支援による仮設住宅数2）
地域 名
仮設 住 宅
団地 数
計画住宅
戸数
完成住宅 受1
ナ渡し
戸数 戸数 利用戸数 総 人 ロ
KOCAELl26 24622291 22912291 216G
SAKARYA33 47294418 39033863 15267
BOLU 16 14261426 12561256 4731
DUZCE 10 34313431 34313431 13092
YALOVA3 462462 435435 ↑260
合計 88 125tO 12028 11316 11276 36510
写 真 5 支援団体の建 設 した仮設住宅団地 （
1999 年12 月撮 影 ）
（写 真5は北後明彦氏による撮影）
写真6 支援団体の 建 設 し た 木製仮設住宅団地 （
2000 年7月撮影）
（写真 6は松 川淳子氏 による撮影）
表7
仮設住宅と テ ン トの 入 居者数の変 化
仮設住宅 テント
年 月
完成 戸 数 入 居 戸 数 入 居人ロ入居率 テント
「 戸数居 住
口
1999／111096042831713239 ％一 一 一
ig99／1229882147245889649 ％10931010132750
2000 ／132141180847233656 ％77275 ↑0108684
2000
／3一翩
134，345 一55 凾86 ，
246
200D
〆5384003658014000095 ％55 一7010GO
2000
／フ42G484106314705698 ％36785531089
2000
〆8426164124114407997 ％29693326729
※「
一
」は数値不明
273
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3．4 テントか ら 仮設住宅への推 移 と住宅移動過程
M7 クラス の 大地震が 3ヶ月 と いう期間で連続して生じたこと が
避難生活や仮設住宅供給 に大きな影響 を与えた。コジャエリ地震に
よるテントか ら仮設 住 宅 へ
の被災者の住 宅移 動過 程 は 、
ボル地震の
影響 を受 け大 幅 に遅れる結 果 とな った。
一
方12 月に入ると仮 設 住宅
が 徐 々に 完 成 し、テントか ら仮設住宅へ
の移動が 見 られ るようにな
った（
表7）
。
その後 仮 設 住 宅 の建設は 1999 年12月から2000 年1
月にピー
クに達する が 、
その時期テントか ら 仮 設 への入の移動はな
かなか進まなかった。
2000 年1月下旬、
仮設住宅完成数が約 32000
戸であったのに対して 約56％の入居率であった。
これが3月上旬に
はほぼ90 ％に達し、7月で計画戸数約 42，
000 戸はほぼ100％の供 給
お よ び 入 居 とな った。
冬の寒 さが厳 しい 12月、1月 という時期 にも
関わ ら ず 仮設 住 宅への入居が進 まなかった理 由として、文献5） に
3点が挙 げ られ ている。
まず、
テント
村で生 活 している と食事や医
療 な どのサービ ス が無料で受 け られる が 、仮 設 に移る と それ ら が な
くな って し まうこと、
2点目は自力テントの生活者は家賃 補助制 度
による金銭的な補助を受 けていたが、仮設住宅 の入居に伴いそ れ が
停止され ること、
3点目として仮設 住宅 での避難生活や仮設住宅へ
の移動負担 の面で、その後の恒久住宅への入居 が遅れ るので は と の
不 安 が あ った こ と で あ る 。
次の段 階 と して 仮 設 住 宅 か ら恒久住宅への移動が大 きな課 題 とな
るが、都市 部 の復 旧及 び 復 興 住 宅 の建設には時間を要することが予
想され 、
そのた め 被災地の被災者も自らの手で再建 過 程 を描 け る状
態には達 して い ない。さらに社会経済状況 の悪化か ら 仮設居住 者の
失業率が 40 〜
50 ％に も達 してお り、自力再建意欲及 び可能性を低下
させ ている。こ の 次の段階 として、住宅再建の方策を模索 しつつ、
仮設住宅居住 の長期化 も視野に入れた援助 策が必要と 思 わ れ る 。
3．
5 応急避難 計画前の住 民意 識 について
文献6）によると1999 年9月23 日にト
ルコ政府統計局 と 公 共 事
業住宅省が共同 して、
コジャエリ地震で住 宅 を被 災 し た 59844 世 帯
を対象と して意識調査を行っている。こ の 結 果 によると住宅再建意
向について、
57．
8％の世帯が家
賃補助 を望み、
4／．2％が仮設住宅 を
含む一
時的な 避 難住宅を 希 望していた。こうし て 政府 は応急避難策
とし て 仮設住宅を中心 とした公的・
民的支援型避難プランと家 賃 補
助を中心 と し た 自力型 避 難 プランを 明示 して いる。こ の 2タイ プの
プラン提示 は メ キ シコ地 震 （1985）や 台湾地震 （
1999） な ど
の災害
事 例 と同様 である。この時 に 阪 神 ・
淡路 大 震 災 と 異 な り 仮設住宅へ
の希望 が殺 到 しなかった背景 と して 、現 在 も 血 縁 関 係 に よ る 「
共助」
の意識 が強いこと、周辺市町村か ら都市部へ
流 入 して き た 人 々は農
村部 に実家 を持 っている場 合 があることなどか ら、
比較的避難 時 に
受け皿となる住宅が存在 したことがあ る。
これが50％を超える人々
が自力型避難 プランを選択 できた理由であ る と同時 に、次の 段 階で
仮 設住 宅へ
の入 居 を 遅 らせ た 一
因 と し て 考 え ること
ができる。ま た
被 害住 宅の多くは 、アパートメ ントタ イ プであるた め 個々の住宅の
自力建設は考えにくく、高率なインフレー
ション、住宅資産に対す
る考え方の違い、法基 準 と 実 在 建 築 と のギャップ、土地所有に関す
る制度の違いな どの面から、日本 のよう
な恒久住宅建 設 に よる自力
再建 （民間主導の再建活動）プロセスが早期に本格化することは難
しいと思 わ れ る 。
274
4 ま と め
本稿は2度の大 地 震 に 見 舞わ れ た ト
ルコ北西部における地震 後 の
応急避難住宅の過程を捉え、
その現状 及 び 特徴を明らか に し たもの
である。こ の 過程 で指 摘 できることは、
応急避難住宅の段階で民間
及び個人支援団体が非常に力 を発 揮 し て お り、
特に被災者の生活 環
境維持 に効果をあげている点であ る。また政府主導のテント村や仮
設住 宅 団地 の計画においても、コミュ＝ティスペー
スの計画が行 わ
れ、
いわゆる 「
生活 環 境の場」としてのデ ザイ ンが な さ れ 、被災 者
の避難生活 を施設計画面か らも考 慮 している点である。都市部災害
という点 で阪 神 ・
淡路大震災と同様の大 規模 な仮 設住宅団地が形 成
され ているが、支援団体 との協力やその計画理論の実 践 といった面
で大いに 学 ば な けれ ば な らない点を見る ことができた。
避難過程は次段階 と し て 、仮設住宅生活から恒 久住宅建設へと移
行 し て いく が 、現在仮設住宅に 入 居して いる 人 々 の 被 災者 自身に よ
る再建可 能 性 は 低いといわ ざる を 得 ないため、今 後 の移動形態 は 政
府の支 援方 策 によって左右 され る と予 想 され る。「
日市街 地の新築建
物の高さ制限や復興住宅供給を含め た 新市街地計画 といった復興都
市計画 との関係 を見な が ら 被災者 の住宅再建過程を注意深く見て い
く必要が あ る と 思 わ れ る 。
謝 辞
本調査にあ た り、現地の政府関係者 、自治体 の方々、大学関係者、
被災者
支援団体の方々に多大 なご協力をいた だいた。ま た、日本建築学会 トルコ第2
次調査団の方々、
及 び トル コ被災地再建支援調査 団の方々と情報交換をさ せ
て い た だ き、御協力をいただいた。
こ こ に記して改 めてお礼を 申し上 げたい。
参 考 文 献
1）日本 建 築 学 会 他合 同被 害調 査 団、
「1999 トルココジャエリ地 震 被 害調査
速 報会資料」、1999．9．28
2＞資料は http：〃www ．abk ．
gov ．tr （地域災害調整センター
のホー
ムペー
ジ〉よ
り引用．地域災害調整セ ン ター
は英名 「
Regional Disaster Coerdination
Governorate亅．使用 したデー
タ は ，
2eOe 年7月20 日と2000 年8月8日更新
分．
現在は 閉 鎖．（2000 年10月）
3）fittp
：〃．
basbakanlik．
gQv ．
tr （ト
ルコ共和国総理府のホー
ムペー
ジ ）
に よ り
「
T．C
BASBAKANLIK
KR 重Z Y◎NET 吋MERKEZ 【02 ．Ot．2000 SAAT
l8：00
BASIN
BiLDRiSi 」．
4）中林一
樹他，
「
トルコ・
コジャエリ地震における都市災害の 特 徴と課題」，
地域安全学会梗概集 ，No ．9，地域安全学会，
1999 ，
p238
5＞United
Nations
Children
’
s
Fund
Ankara：UNICEF Recovery Plan fer Turkish
Children，
1999．12
6）UN O伍ce
fer
the
Coordination
of Humanitarian Affairs （
OCHA ）
：Turkey曹
Earthquake OCHA SitUation Report No ．24，
1999．9
7）Intemational
Federation
of
the
Red Cross ：Turkey Earthquakes Situvatien Report
No ．34 〜
41．
Dec．1999
〜
Aug20eO
8）United
Nations
Chi］dren
’
s
Fund
Turkey
CounUY Offlce
：UNICEF Recevery Plan
fc）
r
Turkish
Children Situatien Report
，
Ja皿，2DOO
9）佐々波秀彦他，
「トル コ・
コジャエリ・
ボル大震 災調査報告 都市・
住 宅
復興計画について亅，2000 年度日本建築学会大会 （東 北）特別報告会 資料，
日本 建築学会トルコ コ ジャエリ地震 復興 関 連 調 査 団 ，
2000．9
10 ）佐々波 秀彦他，
「
1999 年 ト
ルコ コ ジャエリ地震復興関連調査
速報会 資
料L
日本建築学 会災害委 員会復 興 関連 調 査 団 （第 2次調査団），
2000 ．1
11 ＞江田隆三、松川淳子他，
「
国際シ ン ポ ジ ウム トルコ・
台湾復興支援 を都
民の手で」，
トルコ復興支援実行委員会，
2000．9
［
2000年10月20日原稿受理 20G1年2月22 日採用 決 定 ］
N工工一
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