生凍結南極オキアミ(Euphausia superba)を用いて,異なる酵素分解条件下でオキアミエキスを調製し,5%TCA可溶画分中の遊離アミノ酸及びペプチド生成の様相を検討した.(1) オキアミの自己消化酵素単独では,グルタミン酸,アラニン,バリン,ロイシン,リジン,アルギニン等が遊離しやすく,また,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシンを含有するオリゴペプチドの蓄積が顕著であり,それらの平均アミノ酸残基数は,比較的小さく約2残基であった.(2) 自己消化に市販酵素剤(プロテアーゼアマノA,原料に対して0.2%(w/w))を併用した場合,アミノ酸の遊離において,添加効果が自己消化に相加的に現われるアミノ酸,ならびにスレオニン,セリン,シスチン,バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,リジン,ヒスチジン,アルギニン等の相乗的効果が現われるアミノ酸が認められた.また,オリゴペプチド量も酵素添加によって著しく増加するが,その平均アミノ酸残基数は,約2残基であった.(3) 加熱処理により自己消化酵素を失活させたオキアミの市販酵素剤単独による消化では,ロイシン等の疎水性アミノ酸とリジンの遊離率が高く,残存ペプチドの平均アミノ酸残基数は,約4残基であり,自己消化酵素の関与する場合に比較してペプチド鎖長は,2倍の値を示した.(4) 前記いずれの反応条件においても,プロリン,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシンの遊離は低い値を示し,アスパラギン酸,グルタミン酸は蓄積されるオリゴペプチド中の主要な成分として検出された.(5) 改良ニンヒドリン法及びトリニトロベンゼンスルホン酸法を併用することにより,簡便な遊離アミノ酸及びペプチド量の定量が可能なこと,及び食品加工の現場における品質管理に適用できることを示した.(6) オキアミ生体成分としてのタンパク質を構成しない主要なアミノ酸であるタウリンは,酵素反応条件,反応時間にかかわらず一定の値を示し,エキスを素材とした加工品製造過程の品質管理に指標物質として応用し得ることを示した.