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1.緒 言
最近,自動車の軽量化を目的として,自動車ボディへのア
ルミニウム合金の適用が始まっている1)
。これらの中で自動
車ボディ用 6000 系アルミニウム板は,アルミニウムメーカ
より T4 材で出荷され,自動車メーカでプレス成形された後,
塗装焼付けの工程が採られている。これは耐力の低い T4 材
をプレス成形することで成形時の割れ限界を高くでき,さら
にスプリングバックを小さくできるためである。一方で自動
車の製品としては,耐デント性の観点から高い耐力が望まれ
ている。そのため T4 材を塗装焼付け時に耐力上昇させる
(Bake Hardening, 以下ベークハードと称する)ことが必要で
ある。
このような背景から,Al–Mg–Si 合金の時効特性およびベー
クハード性に関する多くの研究が行われ,最近では溶体化処
理後に 70°C 以下で保持する予備時効(以下,自然時効と称
する)を行うと,ベークハード性が低下することが明らかに
なってきている2)!4)
。しかし,自然時効を含めた二段時効特
性は,多くの Al–Mg–Si 合金において古くから調査されてい
るものの,短時間の人工時効であるベークハード性と自然時
効に関する報告では,過剰シリコン型 Al–Mg–Si 合金に関す
るものが多い3)!6)
。過剰シリコンの役割を理解する上でバラ
ンス合金と過剰シリコン合金の比較は重要であることから,
本研究では,マグネシウムおよびシリコン添加量を変化させ
たAl–Mg–Si 合金のベークハード性に及ぼす自然時効の影響
を調査した。
2.実 験 方 法
まず,Table 1 に示す化学組成の合金を DC 鋳造し,560°C
で10 h の均質化処理を行った。その後,熱間圧延,冷間圧延
を行い,板厚 1mmの冷間圧延板とした。Fig. 1 に熱処理条
件を示す。得られた冷間圧延板を 550°C に加熱した塩浴中
に60 s 保持の条件で溶体化処理後,氷水中に焼入れした。そ
の氷水中で 10 s 保持した後,直ちに塗装焼付けに相当する
170°C で1.2 ks のベーク処理または 86.4 ks のピーク時効処理,
あるいは 20°C の自然時効した後同様のベーク処理またはピー
ク時効処理を行った。自然時効は精密な温度管理を行う目的
Al–Mg–Si 合金のベークハード性に及ぼす Mg とSi 添加量
および自然時効の影響 *
八太 秀周 ** ・田中 宏樹 ** ・松田 眞一 ** ・吉田 英雄 **
Journal of Japan Institute of Light Metals, Vol. 54, No. 10(2004), pp. 412–417
Effects of Mg,Si contents and natural aging conditions
on the bake hardenability of Al–Mg–Si alloys*
Hidenori HATTA**, Hiroki TANAKA**, Shinichi MATSUDA** and Hideo YOSHIDA**
Effect of natural aging conditions on split aging, especially bake hardenability at 170°C for 1.2 ks and 86.4 ks on Al–
1%Mg2Si,Al–1.5%Mg2Si and Al–1%Mg2Si–0.6%Si alloys have been studied using hardness measurement, DSC
analysis and electrical resistance measurement. The increasing hardness of an Al–Mg–Si alloy with excess Si during
baking at 170°C for 1.2 ks without natural aging is higher than that of Al–Mg–Si alloys without excess Si. However,
the hardness of the high Si content alloy after baking at 170°C for 1.2 ks was decreasing with increasing natural aging
time before baking clearly. It could be considered that the cluster which did not transfer to
b
!phase formed using va-
cancy during natural aging on the high Si content alloy. The
b
!phase of the high bake hardenability sample on DSC
analysis appeared at lower temperature compared with the low bake hardenability sample. The
b
!phase which was
located at lower temperature on DSC analysis precipitates quickly during bake at 170°C, and the hardness was in-
creased during baking at 170°C for 1.2 ks.
(Received January 20, 2004)
Keywords:Al–Mg–Si alloy, bake hardening, natural aging, DSC analysis
研究論文
軽金属 第 54 巻第10 号(2004),412–417
*第105 回秋期大会(平成15 年11 月)で一部発表。
** 住友軽金属工業(株)研究開発センター(〒455–8670 愛知県名古屋市港区千年 3–1–12)。Research and Development Center, Sumitomo
Light Metal Industries, LTD.(3–1–12 Chitose, Minato-ku, Nagoya-shi, Aichi 455–8670). E-mail:hidenori_hatta@mail.sumitomo-LM.co.jp
Table 1 Chemical composition of the alloys(mass%)
Alloys Mg Si Fe Al Mg2Si excess Si
Al–1Mg2Si 0.62 0.39 0.03 Bal. 0.98 0.03
Al–1.5Mg2Si 0.99 0.56 0.03 Bal. 1.53 —
Al–1Mg2Si–0.6Si 0.62 0.96 0.03 Bal. 0.98 0.60
で恒温水槽を用い,5°C, 20°C, 40°C の条件で行った。また,
ベークおよびピーク時効処理は恒温油槽を用いて行った。な
お,溶体化処理以降の各工程間はサンプルを液体窒素中で保
管し,実験条件以外の自然条件の影響を最小限に抑えた。
ベークハード性の調査は,ビッカース硬さ試験機を用いて
荷重 49 N にて行った。時効挙動の調査は示差走査熱量計
(DSC)分析および電気抵抗測定を行った。DSC 分析では測
定中の自然時効の影響を最小限に抑えるために高速昇温が可
能で入力感度の高い入力補償型DSC を用いて,昇温速度
40°C/min で行った。電気抵抗測定は,1"2"200 mm の試験
片を自然時効中および 170°C での時効中に,1A の電流を通
電し,四端子法により時効温度で電圧を連続的に測定し比抵
抗に換算した。さらに同試験片を時効前および時効後に,ダ
ブルブリッジを用いて液体窒素中で電気抵抗測定を行い,時
効温度で測定した結果を液体窒素中における電気比抵抗値に
補正した。
3.結果および考察
3. 1 マグネシウムおよびシリコン添加量の影響
(1)ベークハード性
焼入れ後に 20°C で0!604.8 ks の自然時効を行ったサンプ
ルを 170°C で1.2 ks のベーク処理および 86.4 ks のピーク時効
処理したときの処理前後の硬さを Fig. 2 に示す。Al–1Mg2Si
合金では自然時効時間に伴いベーク前の硬さが緩やかに上昇
し,170°C で1.2 ks のベーク処理後の硬さも緩やかに上昇す
るが,ベーク前後の硬さの差で表されるベークハード量は小
さい。また,170°C で86.4 ks のピーク時効処理後では,自然
時効時間に伴いわずかに硬さが低下する。それに対し,Mg2Si
添加量の多い Al–1.5Mg2Si 合金のベーク後の硬さは,自然時
効時間の増加に伴い低下し,ピーク時効処理の場合にはさら
に低下が顕著となる。一方,過剰シリコン型の Al–1Mg2Si–
0.6Si 合金では,ピーク時効処理後の硬さは Al–1Mg2Si 合金と
同様に自然時効に伴い緩やかに低下する程度であるのに対し,
焼入れ直後に 170°C で1.2 ks のベーク処理を行う場合には大
きなベークハードが得られるが,自然時効時間に伴い急激に
低下する傾向がみられる。
Al–1Mg2Si 合金と Al–1.5Mg2Si 合金との比較で,170°C で
86.4 ks のピーク時効処理の場合は,Mg2Si 添加量の少ない合
金では自然時効に伴う強度低下がわずかであるのに対し,
Mg2Si 添加量の多い合金では自然時効とともに強度が低下す
る傾向がみられる。これは従来の自然時効による負の効果の
報告7)と一致する。しかし,170°C で1.2 ks のベーク処理の
場合には,Al–1Mg2Si 合金と Al–1Mg2Si–0.6Si 合金の比較のよ
うに,Mg2Si 添加量が少ない合金でも,過剰シリコンの存在
により急激な自然時効に伴う強度低下がみられる。これらの
ことから 170°C で1.2 ks のベーク処理のような短時間時効と
ピーク時効では,自然時効の影響が異なることがわかる。
(2)電気比抵抗
20°C の自然時効における電気比抵抗の変化を Fig. 3 に示
す。いずれの合金とも自然時効に伴い電気比抵抗が上昇する
が,この傾向はバランス合金では Mg2Si 量の多い合金の変化
が大きく,さらに同一 Mg2Si 量であっても,バランス合金よ
り過剰シリコン合金の方が顕著である。このことから,電気
比抵抗の変化は Mg2Si 量よりも,むしろシリコン添加量に
伴って大きな変化を示すと考えられる。すなわち,シリコン
J. JILM 54(2004.10)413
Fig. 1 Schematic diagram of heat treatment.
Fig. 2 Changes in the hardness with natural aging time at 20°C before and after bake hardening at 170°C for 1.2 ks and
86.4 ks for the alloys(a)Al–1Mg2Si,(b)Al–1.5Mg2Si and(c)Al–1Mg2Si–0.6Si.
添加量に伴い,自然時効中における何らかの初期構造の形成
が多くなることを示唆している。山田ら2)はDSC 分析など
の結果より 70°C 以下の自然時効において Si-rich クラスタ
(以下,クラスタと称す)が形成し,そのクラスタは
b
!相の
前駆段階のGP ゾーンの形成を阻害し,
b
!相の析出密度を小
さくすると提案している。これを本結果に採り入れると,今
回の電気比抵抗変化においてシリコン添加量が多い合金ほど
電気比抵抗の変化が速く大きいことから,クラスタと考えら
れる初期構造の形成は,シリコン含有量が多い合金ほど速く
て多くなると考えられる。バランス合金においては,Mg2Si
量の多い方が電気比抵抗の増加が大きいことから,高 Mg2Si
合金ではクラスタの形成が多いと推測される。このことから,
析出強化に寄与する
b
!相の生成に本来必要とされるシリコ
ンが,安定なクラスタを形成して消費され,その結果,見か
け上,マグネシウムと結合できるシリコンが不足した状態に
なり,
b
!相の析出量が減少するためピーク時効(170°C–
86.4 ks)における強度が低下すると考えられる。
Al–1Mg2Si–0.6Si 合金と Al–1Mg2Si 合金の自然時効中の電
気比抵抗変化の差およびベークハード量 DHV(時効条件:
170°C–1.2 ks)の差をFig. 4 に示す。これは過剰シリコン合
金の電気比抵抗の変化量およびベークハード量からバランス
合金のそれらを差引いた値であり,すなわち過剰シリコンに
よる効果である。ベークハード量の差は自然時効とともに急
激に低下し 7.2 ks でほぼ0になる。また,電気比抵抗も自然
時効の初期段階で急激に上昇し,2ksを超えるとごくわずか
の上昇量となる。このことから,過剰シリコンは大きなベー
クハード性をもたらすが,自然時効によりごく短時間で安定
なクラスタを形成し,ベークハード性に寄与しなくなると考
えられる。
溶体化処理後自然時効なしに 170°C でベーク処理した場合
の電気比抵抗変化を Fig. 5 に示す。自然時効なしでベーク処
理した場合には Fig. 2 に示すように各合金のベークハード性
に大きな差がみられるが,170°C で1.2 ks までの時間のベー
ク処理ではいずれの合金とも電気比抵抗の変化はほとんどみ
られない。このことから,ベークハードに寄与する相の析出
および固溶量の減少では電気比抵抗変化にほとんど表れない
ことがわかる。
(3)DSC 分析
焼入れ直後および焼入れ直後材を自然時効なしに 170°C で
1.2 ks のベーク処理した後の DSC 分析結果をFig. 6 に示す。
Al–1Mg2Si–0.6Si 合金の焼入れ直後材において,A, B, C, D の
発熱ピークおよび Eの吸熱ピークがみられる。従来の報
告8)!10)において AとBはクラスタの形成,Cは
b
!相,Dは
b
#相の析出,EはGP ゾーンの再固溶に対応すると言われて
いる。Al–1.5Mg2Si 合金ではピーク Aはみられず,また
b
!相
のピーク CがAl–1Mg2Si–0.6Si 合金より高温側に位置する。
Al–1Mg2Si 合金では
b
!相のピークがさらに高温側に存在し,
b
#相のピークと重なりあっている。これらの合金を 170°C で
1.2 ks のベーク処理を行うと,Al–1Mg2Si–0.6Si 合金では
b
!相
のピークが完全に消滅するのに対し,Al–1.5Mg2Si 合金では
小さくみられ,さらに Al–1Mg2Si 合金ではそれより大きく認
められる。このことは Al–1Mg2Si–0.6Si 合金では DSC におい
414 軽金属 54(2004.10)
Fig. 3 Changes in the electrical resistivity at $196°C
after quenching.
Fig. 4 Changes in the(D
r
Al–1Mg2Si–0.6Si$D
r
Al–1Mg2Si)and
the(DHVAl–1Mg2Si–0.6Si$DHVAl–1Mg2Si)with natural aging
time at 20°C.
D
r
: Changes in the electrical resistivity at $196°C
DHV: Changes in Vickers hardness from before bake
hardening to after bake hardening
Fig. 5 Changes in the electrical resistivity at $196°C dur-
ing baking at 170°C after quenching without natural
aging.
て低温側に位置する
b
!相が,170°C で1.2 ks のベーク処理に
より完全に析出するのに対し,Al–1Mg2Si 合金やAl–1.5Mg2Si
合金では
b
!相が完全に析出しきれていないことを示唆して
いる。しかし,上述の電気比抵抗の変化では明確な差異がみ
られないことから,DSC 分析結果と電気比抵抗変化の対応付
けについては今後の課題である。
3. 2 自然時効温度の影響
(1)ベークハード性
次にベークハード性に及ぼす過剰シリコンの役割を明確に
するため,Al–1Mg2Si–0.6Si 合金における自然時効の影響をさ
らに調査した。
焼入れ後に 5°C および 40°C で0!604.8 ks の自然時効を
行った Al–1Mg2Si–0.6Si 合金を 170°C で1.2 ks および 170°C
で86.4 ks の条件でベークあるいはピーク時効処理したときの
処理前後の硬さを Fig. 7 に示す。ベーク処理前の硬さ変化で
は,40°C は5°C に比較してわずかに傾きが大きい程度であ
る。しかし 170°C で1.2 ks のベーク処理後の硬さは,5°C の
場合には 1.2 ks 以降に硬さの低下がみられ,40°C の場合には
0.3 ks ですでに硬さが低下している。このことから,ベーク
ハードに寄与する因子は自然時効温度の上昇に伴い急速に変
化することがわかる。室温でごく短時間に変化が生じること
から,ベークハード性には凍結空孔が関与しているものと推
測される。
(2)電気比抵抗
Fig. 8 にAl–1Mg2Si–0.6Si 合金の 5°C, 20°C および 40°C で
の自然時効による電気比抵抗変化を示す。5°Cの場合には1ks
まではほとんど電気比抵抗の変化がなく,その後大きく上昇
し始めるが,40°C の場合には焼入れ直後より電気比抵抗が
上昇し始める。この電気比抵抗が上昇し始めるまでの時間は,
ベークハード性が低下するまでの時間にほぼ一致する。この
ことから,電気比抵抗が示す初期構造の形成は,ベークハー
ド性の低下と関係していることがわかる。これはクラスタな
どの初期構造の形成により,焼入れ凍結空孔が消費され空孔
濃度が低下し,
b
!相の析出速度の低下が生じるため,ベーク
ハード性の低下につながると考えられる。
(3)DSC 分析
焼入れ直後および 20°C 自然時効した後に DSC 分析した結
果をFig. 9 に示す。自然時効により二点の変化がみられる。
J. JILM 54(2004.10)415
Fig. 6 DSC curves for Al–Mg–Si alloys(a)as quenched and(b)after baking at 170°C for 1.2 ks.
Fig. 7 Changes in the hardness with natural aging time at
(a)5°C and(b)40°C before and after bake hardening
at 170°C for 1.2 ks and 86.4 ks for the Al–1Mg2Si–0.6Si
alloy.
Fig. 8 Changes in the electrical resistivity at $196°C dur-
ing natural aging at 5°C, 20°C and 40°C after quenching
for the Al–1Mg2Si–0.6Si alloy.
一点目は焼入れ直後では 60°C のピーク Aと90°C のピーク B
が連続してみられるが,自然時効に伴い60°C ピーク Aが消
滅しピーク Bのみとなることである。二点目は
b
!相のピー
クといわれているピーク Cの低温側に小さなブロードの発熱
C#がみられることおよびピーク Cの出現温度が自然時効に
伴い高温側へシフトすることである。これらはいずれも 20°C
の自然時効により短時間で変化する。この室温での速い変化
から凍結空孔が関与していると考えると,ピーク Aは空孔の
存在によってピーク Bのクラスタの形成速度が大きく一部が
低温側からみられるようになったものと考えられ,また,ピー
クCの低温側に小さなブロードの発熱も同様にピーク Cの
一部が空孔の存在により析出速度が大きくなったと考えられ
る。Fig. 10 にDSC 分析における
b
!相のピークの温度と自
然時効時間の関係を,ベークハード量の変化とともに示す。
b
!相であるピーク Cは自然時効に伴い出現温度が高温側へ
シフトし,同時にベークハード性は自然時効に伴い低下する
相関がみられる。これは,自然時効に伴う初期構造の形成に
より凍結空孔の減少が生じ
b
!相の析出が遅くなるか,ある
いは
b
!相の組成,構造が変化し析出が遅くなるために 170°C
で短時間の時効であるベークハード性が低下するものと推測
される。今後,凍結空孔とベークハードの関連を検証する必
要がある。
Fig. 11 に焼入れ直後および 20°C で1.8 ks 自然時効したサ
ンプルおよびそれらを 170°C で1.2 ks のベーク処理を行った
後の DSC 分析結果を示す。強度に寄与するといわれている
b
!相のピーク Cは,焼入れ直後にベーク処理した場合には
完全に消滅するが,自然時効した場合にはベーク後も存在す
る。これは焼入れ後に自然時効すると
b
!相の析出が遅くな
ることを示唆している。Fig. 6 および Fig. 11 に示す DSC 分
析結果より,ベークハード性には
b
!相の析出の影響が大き
いと考えられ,DSC 分析の
b
!相の出現温度が低く存在する
ような,すなわち析出速度の大きい材料において,高ベーク
ハードが得られると推測される。
4.結 言
マグネシウムおよびシリコン添加量を変化させた Al–Mg–Si
合金のベークハード性に関して,自然時効の影響を含めて調
査した結果,以下の結論を得た。
(1)焼入れ直後に 170°C で1.2 ks のベーク処理をする場合
416 軽金属 54(2004.10)
Fig. 9 DSC curves for the Al–1Mg2Si–0.6Si alloy natu-
rally aged at 20°C for various times after quenching.
Fig. 10 Changes in the temperature of
b
!peak and the
DHV with natural aging time at 20°C for the Al–
1Mg2Si–0.6Si alloy.
DHV: Changes in Vickers hardness from before bake
hardening to after bake hardening at 170°C for 1.2 ks.
Fig. 11 DSC curves for Al–1Mg2Si–0.6Si alloy without natural aging or with natural aging at 20°C for 1.8 ks(a)before
bake hardening and(b)after bake hardening at 170°C for 1.2 ks.
には,過剰シリコン合金のベークハード性がバランス合金よ
りも大きい。しかし過剰シリコン合金のベークハード性は
20°C の自然時効に伴い急激に低下する。しかし,86.4 ks の
ピーク時効処理する場合には,過剰シリコンの量よりも
Mg2Si 量の多い合金の方が,自然時効による強度低下が大き
く,ベーク処理とピーク時効処理とでは,自然時効に伴う強
度低下の傾向が異なる。
(2)過剰シリコン合金のベークハード性は,自然時効時間
に伴い急激に低下する。これは自然時効中に
b
!相に遷移し
ない安定なクラスタが凍結空孔を消費して形成され,強度に
寄与する
b
!相の析出速度を小さくするためと考えられる。
本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
から
(
財
)
金属系材料研究開発センター(JRCM)への委託研究
「実用金属材料分野ナノメタル技術開発(アルミニウム系サ
ブグループ)」の一環として行ったものである。
参 考 文 献
1) アルミニウムの製品と製造技術:社団法人軽金属学会,(2001).
2)山田健太郎,里 達雄,神尾彰彦:軽金属,51(2001),215.
3)柳川政洋,安部 睦,大家正二郎:軽金属,46(1996),27.
4)佐賀 誠,佐々木行雄,菊池正夫,日比野旭,松尾 守:軽金
属,53(2003),516.
5)S. Kleiner, C. Henkel, P. Schulz and P. J. Uggowitzer: Light Metals
2001 MÉTAUX LÉGERS,(2001), 349.
6)櫻井健夫,大家正二郎,岩村 宏,高木康夫,竹添 修:軽金
属学会第87 回秋期大会講演概要,(1994),185.
7)J. Langerweger: Proc. Aluminium Technology ’86,(1986), 216.
8)A. K. Gupta and D. J. Lloyd: Proceedings of the 3rd International
Conference on Aluminum Alloys, 2(1994), 21.
9)S. P. Chen, K. M. Mussert and S.van der Zwaag: J. Mater. Sci., 35
(1998), 4483.
10)L. Zhen, S. B. Kang and H. W. Kim: Mater. Sci. Tech., 13
(1997), 905.
J. JILM 54(2004.10)417